大河ドラマ『べらぼう』でたびたび登場する「引札（ひきふだ）」。引札は、江戸時代の商人や出版業者が宣伝のために用いた広告手法の一つです。先日の第8話では、主人公・蔦屋重三郎が吉原細見『籬の花』の販売促進のために、派手な引札を作成し、呼び売り隊とともに街頭で配布するシーンが描かれました。これは当時としては画期的な宣伝方法であり、現代のマーケティング手法とも共通点が多く見られます。
本記事では、引札の歴史や役割、『べらぼう』での活用シーン、そして現代広告との関係について詳しく解説します。
ep.1 大河ドラマで注目が集まる蔦屋重三郎とは？引札で江戸時代の広告革命を牽引
ep.2 大河ドラマ『べらぼう』に見る蔦屋重三郎のマーケティング戦略と現代的教訓
ep.3 大河ドラマ『べらぼう』蔦屋重三郎から学ぶ江戸から令和の広告戦略とマーケティングの本質
引札は、江戸時代から明治時代にかけて広く用いられた広告手法で、以下のような特徴を持っていました。
江戸時代の引札の特徴
視覚的インパクト
木版画を用いた色鮮やかなデザインで、人目を引く工夫がされていました。
現代の広告でも、ポスターやデジタルバナーに鮮やかなカラーやインパクトのあるデザインが用いられるのと同じ手法です。
情報伝達のスピード
吉原細見「籬の花」の半値販売や、歌舞伎役者・瀬川の襲名などの情報が引札に記載され、消費者に即座に伝えられました。
現代のフラッシュセールやSNS広告でも、短期間での情報拡散が重要視されています。
競争優位性の確立
西村屋の「新吉原細見」との競争において、引札は重要な役割を果たしました。効果的な宣伝により、競合よりも優位に立つことを狙った戦略です。
現代のビジネスでも、Google広告やSNS広告を駆使し、競合よりも目立つ施策が重要視されています。
街頭配布による広告戦略
若い者や人夫を使い、方角ごとに割り当てて引札を配布し、広範囲に情報を拡散する大規模な広告キャンペーンを展開しました。
現代では、フライヤー配布やインフルエンサーマーケティングなど、リアルとデジタルを組み合わせた広告戦略が活用されています。
第8話では、蔦屋重三郎が「吉原細見『籬の花』」の販売促進のために派手な引札を作成し、呼び売り隊とともに街頭で配布する場面が描かれました。これは、当時としては非常に斬新な広告戦略であり、彼の商才と創意工夫が発揮された瞬間です。
販売促進
重三郎は「籬の花」の販売促進のために、派手な引札を作成し、呼び売り隊とともに街中で配布しました。これは当時としては斬新な宣伝方法でした。
競争優位性の確立
競合の西村屋『新吉原細見』との差別化を図り、視覚的に目立つ引札で優位に立つ。
→ これは現代のバズマーケティングやゲリラマーケティングの先駆けとも言えるのではないでしょうか。
江戸時代： 木版画の美しいデザインと派手な色使いで、人目を引くことが重視されました。
現代： Web広告やSNS広告では、目を引くビジュアルやアニメーションを用いて消費者の注意を引く工夫がされています。
江戸時代：商人は、対象となる顧客層に応じて異なるデザインや内容の引札を作成しました。
現代： AIを活用したパーソナライズ広告が主流になり、ターゲットごとに異なるメッセージを最適化するマーケティング手法が普及しています。
江戸時代： 「半値販売」や「特別な情報」を記載し、購買意欲を高める戦略が取られました。
現代：フラッシュセール、期間限定プロモーション、ブラックフライデーセールなど、期間を限定した販促活動が有効に活用されています。
① オフラインとオンラインの融合 – 広告の接点を増やす
江戸時代の引札は、通行人に直接手渡したり、繁華街の店先に貼ることで人々の目に触れさせる手法が取られていました。現代では、これにオンラインの仕組みを掛け合わせることで、より効果的な広告展開が可能になります。
具体例:
イベントや店舗での販促チラシにQRコードを掲載し、キャンペーンサイトやECサイトに誘導。例: 小売店で配布するクーポン付きチラシにQRコードを付与し、スマホからオンライン購入できる仕組みを構築。
街頭広告（ポスターやデジタルサイネージ）とSNS広告を連動させ、リアルとデジタルの両方から消費者にアプローチ。例: 大型ショッピングモールの入口に設置された広告に「#〇〇キャンペーン」のハッシュタグを記載し、SNS投稿と連動したプレゼント企画を実施。
② ターゲットに応じた広告展開 – 個別最適化で効果を最大化
江戸時代の引札も、顧客層に合わせて異なるデザインやキャッチコピーを工夫していました。例えば、富裕層向けには豪華な版画を施した高級感のあるデザインを、庶民向けにはシンプルで分かりやすい言葉を使うといった工夫がなされていました。現代では、データ分析を活用し、より精密なターゲティングが可能になっています。
具体例:
SNS広告のカスタムオーディエンス機能を活用し、過去に商品を購入したユーザーや類似属性のユーザーに向けて広告を配信。例: ファッションECサイトが、過去に夏服を購入した顧客に対し、新作の夏物コレクションの広告を配信。
エリアターゲティングを活用し、地域に応じた広告を展開。例: 地元の商店が「○○商店街限定クーポン付き広告」を配布し、来店を促進。
③ ストーリーテリングの活用 – 物語で顧客の共感を得る
江戸時代の引札には、単なる商品情報の羅列ではなく、消費者の関心を引きつけるために、浮世絵風のイラストやユーモアあふれるキャッチコピーを用い、さらに物語性を持たせる工夫がされていました。例えば、商人が商品の魅力を芝居風の対話形式で紹介したり、吉原の遊女や人気役者が推薦するストーリー仕立ての引札を作成することで、人々の興味を惹きつけ、記憶に残りやすくしていたのです。
具体例:
ブランドの創業ストーリーを動画で伝え、顧客の共感を得る。例: 職人が手作業で作る伝統工芸品の製造過程をドキュメンタリー形式で紹介し、SNSやYouTubeで拡散。
限定商品の背景に物語性を持たせ、特別感を演出。例: 「創業100周年記念 限定○○」といった形で、歴史を感じさせるコンテンツを広告に盛り込み、特別な価値を訴求。
大河ドラマ『べらぼう』に登場した「引札」は、江戸・明治時代の広告文化を象徴するアイテムです。現代のチラシやポスターの先駆けとして機能し、美しいデザインと独特の表現で商業活動を支えてきました。現代でもレトロデザインの活用や観光資源としての再評価が進んでおり、その魅力は今なお色あせることがありません。
『べらぼう』をきっかけに、引札の歴史や文化に興味を持った方は、実際に博物館や資料館を訪れて、当時の実物を目にしてみるのもおすすめです。
Tokyo Tokyo(東京おみやげプロジェクト)について
https://tokyotokyo.jp/ja/action/omiyage/
江戸時代から明治時代に使われていた「引札（宣伝用チラシ）」には、当時の日本の文化や暮らしが色濃く反映されています。私たちは、この歴史的に貴重な引札のデザインを現代に活かすため、東京都が進める「東京おみやげプロジェクト」に参画し、伝統的な日本の魅力が詰まった商品の開発と販売を行っています。
東京都と民間企業が共同で開発した伝統的な工芸品から文房具、食料品など、東京旅行の思い出をもっと楽しくするアイテム「東京おみやげ」のPR・販売拠点「# Tokyo Tokyo BASE」（羽田空港）で販売しています。
引札の魅力や現代の広告や商品開発に引札のエッセンスを取り入れたい方は、お気軽にご相談下さいませ。
本記事では、江戸時代の広告手法「引札」に焦点を当て、大河ドラマ『べらぼう』での描写をもとに、その歴史と現代マーケティングへの応用を解説します。引札は、当時の商人や出版業者が使用した広告チラシであり、視覚的インパクト・ターゲット別広告・ストーリーテリングを駆使して消費者の関心を引きました。
現代のマーケティング戦略との共通点として、オフラインとオンラインの融合、ターゲティング広告、ブランディングストーリーの活用を挙げ、具体例を交えて解説。江戸時代の広告の知恵を、SNS広告やインフルエンサーマーケティング、エリアターゲティングなどに応用する方法を提案します。