店舗を経営するにあたって「新規出店はどこにするべきか」「既存店の売上を伸ばすにはどのようにすれば良いか」などで深刻に悩んでいる人も多いでしょう。このような悩みを解決するためには、入念な「商圏分析」が欠かせません。とはいえ、具体的にどのように行うのかよくわからない人もいるのではないでしょうか。そこで、今回は「商圏分析」の特徴や基本的な方法、成功のポイントなどについて解説します。
1. 収益性の分析には「商圏分析」が必要不可欠!
店舗の経営をするには、安定した収益を確保する必要があります。その収益性をどのくらい上げられる可能性があるかを把握するためには、商圏分析の実施が欠かせません。ここでは、まず商圏分析とはどのようなものか、目的は何か、どのようなメリットがあるかなど押さえておきたい基本的な知識について解説していきます。
商圏分析とは、商圏内のさまざまなデータを集めて分析し、マーケティングに役立てる手法を指します。商圏とは、経営する企業や店舗などに来店する可能性がある人が住む地理的な範囲のことです。商圏の範囲や状況を把握することは、マーケティングの基本といえます。分析に当たって収集するデータは、そのエリアに住む人の年齢層や性別、年収などの属性、既存客の情報だけでなく、地域の再開発計画や市場環境など多岐にわたります。さらに、出店すればパイを取り合うことになる競合他社・他店の展開状況についても情報も集める必要があります。
このような調査・分析を行う主な目的は、「新規出店する際にどの程度の収益が見込めるのかを把握するため」「長期的な売上予測を立てるため」などです。また、効果的なマーケティング施策を立てるためにも欠かせません。方法としては、実際に現場を歩いて調査するフィールドワークや地理的データから売上予測を立てる“ハフモデル”を活用する方法などがあります。“ハフモデル”とは、「売り場面積が広いほど魅力度が増し、消費者がその店舗を選ぶ確率が高まる、ただし家からの距離が近いほうが良い」という傾向をふまえた分析手法です。
引用リンク:ハフモデルとは?|エリアマーケティングラボ 〜業界の最新動向〜(技研商事)
一般に、分析を行う際は国が管理しているデータとして総務省統計局による国勢調査や住民基本台帳などのデータや、GISソフトなどを活用して行います。GIS(Geographic Information System)とは地理的情報システムのことです。
1-2.商圏分析を行うメリット
ビジネスを成功させるためには、消費者のニーズを的確につかむことが不可欠です。たとえば、そのエリアに多く住む層がファミリー層なのか一人暮らしのビジネスマンなのかで店に求めるものが異なることは想像できるでしょう。戦略も変える必要があります。商圏分析を行う大きなメリットは、この潜在的なニーズを把握することができることで、戦略が立てやすくなる点にあるでしょう。ターゲット層や地域の特性、将来性、競合他社・他店の状況など多角的なデータが把握できれば、購買意欲を促進する店の品ぞろえや効果的な広告の打ち方などに反映させることができます。
また、得られた情報は、新規出店時だけでなく経営を続けていくうえでのさまざまなフェーズで役立てることが可能です。たとえば、キャンペーンを企画したり宣伝したりする際に、ターゲット層により刺さりやすい内容を考案することができます。消費者のニーズを満足させるものが何なのか。対象を把握し設定することもできるでしょう。そうなれば、退店リスクを軽減することにもなりますし、売上アップも見込めます。
1-3.商圏分析を行う際の注意点
商圏分析は、幅広い分野のデータを正しく収集し、分析する必要があります。データ分析だけでなく、周辺環境を正確に把握するためには実際に現地を歩いて調べるフィールドワークを行うことも必要です。それも、一度ではなく、曜日や時間帯を変えて何度も行わなければ消費者動向を高い確度で把握することはできないでしょう。このように、商圏分析には手間と時間、そしてコストがかかります。充分な商圏分析を行うには、社内リソースが足りていないケースもあるでしょう。そのようなときは、商圏分析を得意とする外部サービスを活用するのも1つの方法です。
2. 商圏分析の代表的なやり方
実際に商圏分析を行うにはどうすれば良いでしょうか。ここでは、代表委的な方法について手順ごとに詳しく手順を解説します。
<商圏を分析するときに使えるデータにはどのようなものがあるか>
2-1.1.自社データを地図上にマッピングし、商圏を把握する
最初に、商圏の範囲を正確に把握する必要があります。まずは詳細な地図を用意しましょう。そして、その地図に、店舗やオフィスの位置、顧客の住所など把握している情報をマッピングしていきます。同時に競合他社・他店の住所がわかっていれば顧客データもマッピングしていきます。こうすることで、自店とライバルとなる店舗との位置関係を含め、エリアの状況を客観的かつ俯瞰することができます。使用する地図は紙のものでも可能ですが、商圏分析ソフトやアプリなどを使うことが望ましいでしょう。これは、電子ツールを用いたほうがデータを管理・可視化さらには共有しやすいためです。
ときには必要な情報だけを選んで表示できるなど、データの入れ替えもデジタルの方が対応できることも多く使い勝手がいい面があります。シンプルな機能のものであればインターネット上で無料公開されているので、活用するのも良いでしょう。
<商圏を定義するときの一般的な手法>
2-2.2.商圏の把握・レポート作成を行う
商圏をマッピングしたくても、新規出店時などで顧客データがないこともあるでしょう。そのようなときは、まずは仮の商圏を想定する必要があります。「半径〇Km圏内」など距離で定義する以外に、「車で〇分圏内」などのようにアクセスに掛かる時間の範囲で考える方法もあります。自店の立地などの特性を考慮し、なるべく適した範囲を設定することが大切です。商圏が明確になったら、今度は地域の特性を把握する作業に移ります。これは、国勢調査の統計データや外部企業が公表しているデータなどを活用すると良いでしょう。
国勢調査や住民基本台帳などの公的なデータを使えば、範囲内の人口比や世帯数、年齢層などさまざまな情報がわかり、産業や人口移動などの地域特性もつかむことができます。競合店の状況を把握するには、経済産業省の商業統計が便利です。エリアの状況や特性が把握できたら、得られた情報を分析して商圏レポートを作成します。商圏内で多いのはどのような方が多いのか、どのような競合店があるのか、全国のほかのエリアと比べどのような地域特性が見られるかなどをまとめましょう。レポートを作成することで、商圏の特性が把握しやすくなります。
こういった分析を行うときには分析ツールが必要になってきますが、無料でも利用することができるツールもあります。初めにツールを入れるよりもどういうデータが自分のビジネスに役に立つのか見極めることが重要ですので、まずは無料のツールを使ってどんなデータがあるのかを確認して先に進めるのも一つの方法です。下記の記事で無料ツールについて案内していますので、参考にしてみてください。
参考リンク:
エリアマーケティングとは?~無料で使える商圏分析ツール5選~ | オリコミサービス エリアマーケティングブログ
<一般的商圏基礎データ>
性・年代別の人口や住宅の建て方家族構成などをまとめたもの 出力するのに外注する場合は3万円くらいが相場
2-3.3.マーケティング施策を立案・実施し、PDCAを回す
レポートを作成することで、漠然としていた地域の特性が明確になってきます。次には、まとめた情報を活用してマーケティングや営業戦略も考えてみることが必要です。たとえば、一人暮らしのビジネスマンが多いエリアと、富裕な高齢層が多いエリアとでは打つべき施策が違います。スマホアプリで電子クーポンを配布する、折り込みチラシに力を入れる、サンプルを配布するなど、地域の特性によってそこに合うプロモーションの手法は異なるものです。特性に応じて、もっとも反響が見込める戦略を検討・実施しましょう。
とはいえ、時間が経過すると地域の状況は変わるものです。たとえば、都市開発が進みファミリー層が増加したり、若い層が流出したりすることもあるでしょう。過去のデータに頼り、変わらず1つの戦略を続けていても、継続した効果は望めません。PDCAのサイクルを回し、戦略の精度を高めることが大切です。PDACとは「Plan・Do・Check・Action」のことで、立案して実行したあとは成果を検証して、問題点があれば改善する流れを指します。この流れを繰り返していくことが重要です。(そうした取り組みに終わりはありません。)
なお、PDCAは短いサイクルで回すことが大切です。また、改善したプランが効果的に機能しているかを測るためには、前回の成果と比較できるレポートを作成しておく必要もあります。PDCAのサイクルが形骸化しないよう、しっかり機能する体制を整えることも重要なポイントです。
<データを分析するときに使える手順→各データなどを組み合わせて継続的に行っていくことが重要>
3. 商圏分析を成功させるポイント
商圏分析を成功させるためには、いくつか押さえておくべき点があります。ここでは、2つのポイントを解説します。
3-1.一度きりではなく継続して行う
商圏分析は、一度行えばそれで終わりではありません。定期的に継続して行う必要があります。なぜなら、エリアの状況はいつまでも同じではないからです。住人の転入や転出、世代交代が盛んなエリアもあるでしょう。都市計画によって人口が一気に増え、構成比が変わったり経済活動が活発になったりすることもあります。引っ越しシーズンや大型商業施設の開業・閉鎖、大規模マンションの開発などがあると地域特性に変化が起きやすいです。このように、エリアの状況は日々変化しているため、長期間商圏分析を行わないでいるとかつて収集・分析したデータが無用のものになりかねません。そのため、継続して行う必要があるのです。
なお、競合他社・他店の出店状況も、売上に影響を与える要素の1つです。定期的にチェックするようにしましょう。
3-2.商圏を正しく見定める
効果的な分析を行うためには、基本である商圏の正確な把握が欠かせません。第1次商圏・第2次商圏・第3次商圏を基準として、正しく把握するよう努めましょう。第1次商圏とは、徒歩で10~15分程度の距離にあり、そこの住民なら毎日のように来店する可能性があると考えられる範囲のことです。第2次商圏は自転車で10~15分程度の距離があり、週に1、2回来店する可能性がある範囲を指します。第3次商圏は自動車で30~40分ほどかかり、来店する頻度は1~3カ月に数回程度と思われる範囲のことです。
商圏を正確に把握する際に考慮すべきほかの要素として、「商圏バリア」があります。これは、「消費者が来店するのを妨げる要因となりえるインフラ面や物理面の障害」のことです。たとえば、渋滞しやすい道路や山や河川などが挙げられます。商圏バリアの存在は、来店予測に大きな影響を与えかねません。そこで、正確に把握しておくことが大切です。
<商圏を距離で考えたときの業種別の一般的な距離圏>
4. 商圏分析に活用が進んでいるGPSデータによる分析
商圏の分析は、一般的に居住者情報を元に行われることが多かったのですが、近年GPSデータを利用した手法も浸透してきています。純粋に店舗に来ている人のスマートフォンの位置情報から、店に来ている人が、いつ・どこから・どんな人が来ているかを把握する方法です。
このGPSでの分析は事実ベースで現表把握をすることができますので、とても有効であるとともに、自分のお店だけではなく、競合店舗についてもいつ・どこから・どんな人が来ているか、が把握できるのがポイントです。GPSデータが利用できるようになる前は、来店者のアンケートをとったり、他の方法から推測する手段をとっていたわけですが、今なら、比較的安価に、かつ大量のデータを元に分析ができるわけです。もちろんアンケートを取ったり、様々な情報から仮説立てをすることは今でも重要なことなのですが、手間を考えても、コストを考えても。また消費者理解をするうえで、GPSデータは今後活用していくべきデータと言えます。
<建物を定義してこのなかに来ている人のスマホの位置情報データを元に計測する> ※オーケー長津田店の例
<来訪した人のスマホの契約者情報(居住丁目)から来訪範囲を見て商圏を定義する>
<商圏の定義だけではなく、どの時間にどんな性別・年代の人が来ているかもが把握することができる>
<複数のお店←例えば自分の店舗と競合店舗で、どこからそれぞれ人が来ているかも見ることができる>
これまで人が手を掛けて観察したり、集計していたものをデータで正確にとらえていくことが可能です。ぜひGPSデータの活用も検討してみてください。
5. 商圏分析に困ったときはエリア分析サービスを提供している会社へ相談を!
デジタル化が進み、多店舗を展開する小売業者やデベロッパーなど多くの企業がGPSデータを活用した商圏分析を行っています。とはいえ、商圏分析を的確に行うのは負担が大きく、簡単なことではありません。なぜなら、多種多様なデータを取集し、適切に分析することが求められるからです。また、定期的な見直しもしなければなりません。自社で商圏分析ツールを導入したものの、うまく活用できていない企業もあるのが実情です。自社での対応が難しいときは、商圏分析で実績のある外部サービスを活用すると良いでしょう。
弊社オリコミサービスも、新聞折込チラシの制作や配布に長年の実績あり、蓄積されたノウハウを活かした独自システムによる高精度の商圏分析やエリアマーケティングのノウハウを提供しています。自社で慣れないGISツールを使って商圏分析をゼロから行うよりも、実績のある会社にヒントを得て計画を立てるのはひとつの手です。相談自体は無料ですので、お気軽にご相談いただけたらと思います。
商圏分析を取り入れることででエリアでの収益の最大化を目指そう!
効果的なマーケティングを行って収益を上げるためには、特にサービスエリアが限定されているビジネスや、店舗型のビジネスにおいては商圏分析は欠かせません。継続的にデータを集めて分析を行い、自社の状況を振り返り、戦略を見直すことも大事なことです。それぞれのビジネスに合った方法がありますので、「何から始めたら良いのかわからない」という方も、まずはご相談いただけたらと思います。