「スポーツの日」をテーマにした販促例と消費者動向について
2000年の『ハッピーマンデー制度』導入に伴い、10月10日から10月の第2月曜日に日付が移動した『体育の日』。2020年から『スポーツの日』と名称を変更し、今年は10月10日にあたります。
『スポーツの日』の前身である『体育の日』は1964年10月10日から東京でオリンピックが開催されたことを記念して国民の祝日に制定されました。その後、当初、東京オリンピックを開催する予定だった2020年に『スポーツの日』と名称を変更しました。
名称変更の理由は、『体育』という言葉は義務的・教育的なイメージが強く、時代にそぐわなくなってきたため『体育』より広い意味を持ち、自発的に楽しむことを意味している『スポーツ』にしました。
よって、その趣旨も『体育の日』の「国民がスポーツに親しみ、健康な心身を培う日」から『スポーツの日』は「スポーツを楽しみ、他社を尊重する精神を培うとともに、健康で活力ある社会の実現を願う」に変更されました。
少子高齢化が続き、超高齢社会のなか、増大する社会保障費削減のためには、健康寿命を伸ばす必要があり、『予防医療=病気にかからないこと』に注目が集まっています。健康な状態を長く維持し、充実した老後を過ごしていただくためにも、今後、運動・スポーツの重要性がますます高まっていくことでしょう。
また、東京オリンピック・北京オリンピック開催にともない、スポーツへの熱気が冷めやらぬなか、11月21日(月)~12月18日(日)にかけて、『FIFAワールドカップカタール2022』の開催も控えています。健康意識とスポーツの大型イベント開催により、運動・スポーツへの関心が高まっている現状を捉えて『スポーツの日』をテーマにした販促案の概要を幾つか紹介させていただきます。
運動・スポーツの実施状況や観戦状況、子どもの体力・部活動の状況、食やファッションとの関係性についても各種資料に基づいて、カンタンにまとめてさせていただきました。
流通の販促担当者様はもとより、メーカーの小売担当者様や販促担当者様にご一読いただけたら幸いです。
1:『スポーツの日』関連商材拡販に向けた販促案概要
運動・スポーツへの熱気・関心が高まっているなか、更なる需要の取込を狙って
『スポーツの日』に合わせて『運動・スポーツ』をテーマにした販促案の概要をいくつか紹介させていただきます。
【食品関連】
1:『健康維持サポート企画提案』
健康維持を目的としたシニア層のウォーキング熱の高まりを受けて、『食の面からも健康をサポート』と題した企画。シニア層が摂取すべき栄養素が多く含まれる食材とその必要量も反映したメニュー・レシピ提案。
→骨を強くし、体の力をより高める食材=卵・乳製品
→おもに血や肉の元となる食材=肉・魚・大豆製品
→カラダの調子を整える=野菜・果物・芋
→エネルギー源や体温の元となる=穀類・油脂・砂糖
2:『スポーツ観戦サポート企画提案』
11月21日に開幕する『FIFAワールドカップカタール2022』のテレビ観戦需要を意識した企画。片手でつまめて手軽に食べられ、アルコール類に合うメニューを中心に放送時間帯(0時~、1時~、4時~、19時~、22時~)や対戦国も考慮したメニュー・レシピ提案。
【日本戦放映日程】
・11月23日(木)22時~《VS ドイツ戦》
→夕食後のため、アルコール類に合うおつまみ提案(スナック菓子、チーズ、ナッツ類など)
→ドイツビール、ドイツ料理特集(ジャーマンポテト、ザワークラウト、アイスバインなど)
・11月27日(日)19時~《VSコスタリカ》
→夕食時のため、腹持ちが良く、アルコール類にも合う食事提案(ピザ、寿司など)
→コスタリカ料理特集(カサード=定食、ガジョピント=豆ごはんなど)
・12月2日(金)4時~《VS スペイン戦》
→早朝のため、少し早めの朝食提案(サンドウィッチ、おにぎりなど)
→スペインワイン、スペイン料理特集(トルティージャ、ピンチョス、パエリアなど)
3:『スポーツキッズ応援企画』
トップアスリートを目指しているキッズや運動部に所属している中・高校生のお子さんのいるご家庭に向けたメニュー・レシピ提案。朝食や夕食、練習前後の捕食、試合前日・当日などシーン別に最適なメニュー・食材を紹介する。
→朝・夕食提案=「主食+主菜+副菜+汁物+果物」を組み合わせたメニュー・レシピ提案。
→捕食提案=集中力を高める効果や疲労回復効果が期待できる食材紹介。
→試合前日食事提案=エネルギー源となる炭水化物を豊富に使い、生ものなどを避けたメニュー・レシピ提案。
→試合当日食事提案=炭水化物やビタミンCを効率よく摂取でき、火を通した食材を中心に彩りも鮮やかなお弁当のメニュー・レシピ提案。
4:『子どものための栄養バランスを考える企画』
新型コロナの影響で運動不足となり、結果として、肥満の児童生徒が増加している現状を鑑み、「子どもの食事や栄養バランスを改善するための提案企画」。子どもが敬遠しがちな野菜や豆類など植物繊維を豊富に含む食材を使ったメニュー・レシピ提案や脂肪分や糖分が多く含まれるお菓子に代わって、乳製品や果物を使ったおやつ提案を実施。規則正しい食生活を実践するためのポイントをまとめたリーフレットを作成し、サービスカウンターに設置する展開も併せて実施。
※参考にしたサイトはコチラ
https://www.meiji.co.jp/meiji-eiyoucare/knowledge/malnutrition/007.html
https://www.goal.com/jp/%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88/qatar-world-cup-all-tv-guide/bltadcc5d16a256de17#cs024ed6c675a40581
【ファッション関連】
1:『スポーツブランドウェア特集』
機能性だけでなく、デザイン性にも優れた人気のスポーツブランドのウェアを特集。「運動・スポーツ時」や「日常=タウンユース時」、「部屋着」などブランド横断で着用シーン別に適した商材を紹介する。
また、人気のスニーカーにトップスとボトムスなどを組み合わせたコーディネート提案も併せて実施。
2:『ウォーキングに適したファッション特集』
シニア層に人気のウォーキングをより快適に楽しんでいただくために『ウォーキングファッションフェア』を開催。通気性に優れたトップスや速乾吸水性を兼ね備えたパンツ、滑り止め加工を施した靴下、クッション性が高く、滑りにくいシューズなど機能性にフォーカスした品揃えで展開。特にシニア層には一日の寒暖差に対応するために温度調整が可能なウィンドブレーカーやパーカーも紹介。
さらにウォーキング時に適した飲料やタオル、暗い時間帯需要に対応したLEDライトなど売場横断型の提案もあわせて実施。
3:『ゴルフウェア特集』
3密が避けられるとしてゴルフの人気の高まりを受けて『ゴルフウェア』を特集。ポロシャツやロングパンツ、日よけグッズ(帽子、サンバイザー)などをデザイン性にこだわってトータルにコーディネートして提案。
若年層を中心に新規参入ゴルファーも増えているので、服装などのゴルフ場のマナーやルールなどをまとめた小冊子の作成と各種紹介企画(レッスンプロ、ゴルフ練習場、コースなど)、アドバイザーによる最適なゴルフクラブ提案なども併せて実施。
※参考にしたサイトはコチラ
https://www.descente.co.jp/media/sports/walking/walking_wear/
https://www.descente.co.jp/media/sports/golf/golf_wear/mens_golf_wear/
【スポーツ売場】
1:『トレーニング器具特集』
健康不安や筋力の衰えを感じているシニア層と新型コロナの影響により体育以外で運動する機会が減った小学生、二の腕やおなかのたるみなどを気にしている女性に向けて自宅で簡単にできる『トレーニング器具』を紹介する。
〇シニア向け=ステッパー、フィットネスバイク、踏み台、ミニダンベルなど
〇小学生向け=バランスボールホッピング、鉄棒、トランポリン、バランスボードなど
〇女性向け=エクササイズチューブ、ダンベル、腹筋ローラー、腹筋ベルト、エクササイズバンド、ステッパー、バランスボール、ヨガポール、ヨガマットなど
2:『アーバンスポーツ特集』
『2020東京オリンピック』で注目が集まり、若い世代を中心に競技人口が増えている『都市』を舞台に繰り広げられる『アーバンスポーツ』を特集。競技に使うボードやバイクなどの競技用具だけでなく、最適なファッションや関連性の深い音楽も併せて提案する。
〇東京オリンピックで実施した種目=スケートボード/BMX/3×3(バスケットボール)/スポーツクライミング
〇それ以外の種目=バルクール、インラインスケート、ブレイクダンス…など
新規参入者が多いため、紹介企画(練習場・コース、インストラクターなど)も実施。
2:『アウトドア特集』
オートキャンプ人口が前年比で20%以上増加し、2018年から続いているソロキャン人気に加えて、3密が避けられるとして注目のキャンプ関連を中心とした『アウトドアフェア』を開催。テントや寝袋などを価格だけでなく、機能性にもこだわった幅広い品揃えで展開。食品売場と連動した展開でBBQの食材需要の取込も狙う。釣り用具や登山用具なども取り揃えて、秋のアウトドアレジャーを楽しんでいただく。
※参考にしたサイトはコチラ
https://gift.biglobe.ne.jp/rankings/32962/
https://gift.biglobe.ne.jp/rankings/39639/
https://epark.jp/ichie/workout-goods-for-women-recommended/
https://sports-for-social.com/3minutes/urban-sports/
2:スポーツの実施状況はどうなっているの?
日頃、運動・スポーツを行っている人はどのくらいいるのでしょうか?スポーツ庁による「令和3年度スポーツの実施状況等に関する世論調査」から運動・スポーツの性年代別実施率や実施種目などを見ていきましょう。
【運動・スポーツ実施率】
・実施率は全体で6割近くに達しており、特に60代・70代のシニア世代が男女とも高い。
成人の週1回以上の運動・スポーツ実施率は56.4%。前年度から3.5ポイント減少しました。性別で見ると、男性が58.5%に対して女性が54.1%。男性が女性を4.4ポイント上回っていいます。性年代別で見ると、『70代男性』が最も多く、72.3%。次いで『70代女性(71.2%)』『10代男性(62.5%)』『60代男性(60.1%)』『60代女性(59.1%)』の順となっています。
・前年比で全ての性年代で実施率が下がっており、年代を問わず、女性の減少幅が大きい。
前年比で見ると、すべての性年代で減少しています。特に『10代女性』の減少幅が最も大きく、-7.3%。次いで『60代女性(-5.9%)』『20代女性(-5.8%)』『30代女性(-5.3%)』『60代男性(-5.2%)』の順となっています。
【運動不足について】
・実に8割近い人が『運動不足』を感じており、特に20~50代の働く世代の比率が高い。
運動不足を感じている人の割合は全体で77.9%。前年度から1.7ポイント減少しています。
性別で見ると、男性が74.1%に対して女性が81.6%。女性が男性を7.5ポイント上回っていいます。
年代別に見ると、『40代』が最も多く、81.8%。次いで『30代(81.5%)』『50代(81.2%)』『20代(76.9%)』『60代(76.6%)』の順となっています。
【この1年間に実施した種目】
・6割以上の人が『ウォーキング』を実施したと回答。男女による実施率に差がある種目も。
全体で見ると、『ウォーキング』が最も多く、64.1%。次いで『体操(15.2%)』『トレーニング(14.4%)』『階段昇降(13.7%)』『ランニング・ジョギング等(12.8%)』の順となっています。圧倒的に『ウォーキング』の実施率が高くなっています。
男性が女性を上回っている種目では『ランニング・ジョギング等』が最も差が大きく、12.5ポイント差。次いで『ゴルフコース(8.5P差)』『ゴルフ練習場(7.2P差)』『トレーニング(5.9P差)』『自転車(5.8P差)』の順となっています。
女性が男性を上回っている種目では『エアロビクス・ヨガ他』が最も差が大きく、9.6ポイント差。次いで『体操(8.1P差)』『ダンス(2.6P差)』の順となっています。
【運動・スポーツを実施した理由、阻害要因】
・実施した理由は8割近い人が『健康のため』と回答しています。
運動・スポーツを実施した理由で見ると、『健康のため』が最も多く、76.2%。次いで『体力増進・維持のため(52.0%)』『運動不足を感じるから(48.1%)』『楽しみ、気晴らしとして(42.1%)』『筋力増進・維持のため(35.7%)』の順となっています。
・阻害要因として、ほぼ4割の人が『仕事や家事が忙しいから』と回答しています。
運動・スポーツをするうえでの阻害要因を見ると、『仕事や家事が忙しいから』が最も多く、39.9%。次いで『面倒くさいから(26.6%)』『年をとったから(23.8%)』の順となっています。
『仕事や家事が忙しいから』を理由としている割合が高い性年代は、男女とも20~40代の各年代でいずれも5割を超えています。
【現在の実施状況と今後の予定】
・4割近い人が「定期的・継続的に実施している」と回答しています。
『定期的に運動・スポーツをしており、6か月以上継続している』と回答した人が4割近く(=37.9%)に達しており、男性(43.5%)が女性(32.4%)を10ポイント以上上回っています。
逆に『この1年間に運動・スポーツをしなかった』という回答も2割近く(=18.0%)を占めています。さらに、13.9%の人が『今後もするつもりはない』と回答しており、《運動・スポーツ無関心層》が1割を超えています。
【スポーツの大切さとスポーツの持つ価値】
・7割上の人が『大切』と回答。スポーツを通して様々なものを得ている人が多い。
スポーツの大切さを聞いた設問では、73.6%の人が『大切(含むまあ大切)』と回答しています。
また、スポーツが個人や社会にもたらす効果について聞いた設問では、『健康・体力の保持推進』が最も多く、76.5%。次いで『人と人との交流(50.3%)』『精神的な充足感(44.6%)』『リラックス、癒し、爽快感(33.9%)』『豊かな人間性(33.8%)』の順となっています。
健康・体力保持のような直接的な効果だけでなく、精神的な充足感やリラックス効果などの間接的な効果もスポーツを通して得られていると感じている人が多くいます。
※参考にしたサイトはコチラ
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/houdou/jsa_00098.html
https://www.mext.go.jp/sports/content/20220222-spt_kensport01-000020451_1.pdf
3:スポーツの観戦状況はどうなっているの?
スポーツの観戦状況はどのようになっているのでしょうか?
先ほどのスポーツ庁による『令和3年度スポーツの実施状況等に関する世論調査』から東京オリンピック・パラリンピックの観戦状況とそれ以外のスポーツの観戦状況等を見ていきましょう。
【東京オリンピック・パラリンピックの観戦状況】
・観戦率は60・70代のシニア層が高い。逆に行動に結びつきやすい10代・20代。
全体の65.7%の人が『東京オリンピック・パラリンピックを観戦した』と回答しています。
性年代別に見ると、『70代男性』が最も多く、74.1%。次いで『60代男性(73.3%)』『60代女性(71.3%)』『70代女性(70.5%)』『10代男性(66.5%)』の順となっています。
また、今後の関わり方についての設問では、『特に何もしていない(69.7%)』を除けば、『観戦した際のチームや選手を調べた』が最も多く、16.0%。次いで『そのスポーツのルールを調べた(12.3%)』『家族や友人に、そのスポーツの観戦を勧めた(7.0%)』の順となっています。
そのなかで、6.0%の人が『そのスポーツを自分自身が実施した』と回答しております。
実施した人を性年代別に見ると『10代男性』が最も多く、21.0%。次いで『20代男性(19.4%)』『30代男性(11.5%)』『10代女性(10.7%)』『20代女性(10.1%)』の順となっています。
若い世代の実施率が高いことから、スケートボードやスポーツクライミングなどのアーバンスポーツを実施した人が多かったと推察されます。
【東京オリンピック・パラリンピック以外のスポーツの観戦状況】
・現地観戦・テレビ観戦とも『プロ野球』の人気が高い。
15.4%の人が『直接現地でスポーツを観戦した』と回答。前年比で5.7ポイント減少しています。種目別では、『プロ野球』が最も多く、6.8%。次いで『Jリーグ(2.8%)』『高校野球(2.6%)』の順となっています。コロナ禍で無観客や人数規制により、現地での観戦が難しかったようです。
『TV・インターネットでスポーツを観戦した』人の割合は7割を超えて(=72.2%)おり、前年比で5.4ポイント上昇しています。種目別では『プロ野球』が最も多く、44.4%。次いで『高校野球(37.9%)』『サッカー日本代表(34.6%)』『マラソン、駅伝(33.0%)』『大相撲(24.3%)』の順となっています。地上波での放映機会が多い種目が上位に来ているようです。
上位10種目の中で女性のほうが観戦率の高い種目を見てみると、『フィギュアスケート、スピードスケート、アイスホッケー(全体:24.1%=第6位)』は男性が18.8%に対して、女性が29.3%と10ポイント以上高くなっています。『体操・新体操(全体:20.9%=第10位/女性:23.9%-男性:17.9%=差:6.0P)』や『水泳※(全体:21.2%=第9位/女性:22.9%-男性:19.6%=差:3.3P)』も女性が男性の観戦率を上回っています。
フィギュアスケートや新体操、アーティスティックスイミングなど芸術的な要素が含まれている競技は女性支持が高い傾向を示しています。(※水泳=競泳、水球、飛び込み、アーティスティックスイミング)
※参考にしたサイトはコチラ
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/houdou/jsa_00098.html
https://www.mext.go.jp/sports/content/20220222-spt_kensport01-000020451_1.pdf
4:小中学生の体力は向上しているの?
スポーツ庁による『令和3年 全国体力・運動能力、運動習慣等調査』の結果から、小中学生の体力・運動能力の現状を見ていきましょう。
【体力合計点】
・令和元年と比較してみると、小中学生の男女とも低下しました。
〇小学生《男子:53.6点→52.5点 女子:55.6点→54.7点》
〇中学生《男子:41.6点→41.1点 女子:50.0点→48.4点》
低下した主な要因としては
1:運動時間の減少
2:学習以外のスクリーンタイム(映像視聴時間)の増加
3:肥満の児童生徒の増加
上記に加えて、新型コロナ感染拡大の影響により、学校活動が制限されたことで体育の授業以外での体力向上の取組が減少したことも影響したと推察されます。
実技別に見てみると…
〇『上体起こし』『反復横跳び』『20mシャトルラン』『持久走』
→→令和元年と比較してみると、小中学生の男女とも大幅に低下しました。
〇『長座体前屈』 →→中学生女子を除いて向上しました。
〇『握力』『50m走』『立ち幅跳び』 →→中学生男子以外は低下しました。
【総運動時間(除く体育の授業)】
・体育の授業を除いた総運動時間が《420分以上/週の割合》で見てみると、令和元年と比較して、小中学生の男女とも減少しました。
〇小学生《男子:51.4%→47.8% 女子:30.7%→28.3%》
〇中学生《男子:82.1%→77.6% 女子:60.4%→57.0%》
1週間の総運動時間が420分を超える児童生徒は、それ未満の児童生徒より体力合計点が高くなっています。体力合計点を上げるためには、一定水準以上の総運動時間を確保する必要がありそうですね。
〇小学生男子《平均:52.5点=420分未満:48.4点→420分以上:56.9点》
〇小学生女子《平均:54.7点=420分未満:52.8点→420分以上:59.3点》
〇中学生男子《平均:41.1点=420分未満:33.2点→420分以上:43.3点》
〇中学生女子《平均:48.4点=420分未満:41.8点→420分以上:53.3点》
【スクリーンタイム(除く学習)】
・学習以外のスクリーンタイムが2時間を超える割合が小中学生の男女とも増加しました。
〇小学生《男子:59.1%→62.4% 女子:46.7%→53.2%》
〇中学生《男子:63.5%→70.1% 女子:60.3%→67.3%》
おうち時間が増えたことで、スマホの接触時間も増え、その影響で学習以外のスクリーンタイムも増えたと推察されます。コロナ禍で小中学生においてもスマホ依存の児童生徒が増えているようです。
スクリーンタイムが5時間以上の層と1時間未満の層の体力合計点を比較して見ると、小中学生の男女とも1時間未満の層の体力合計点が高くなっています。
〇小学生《男子:50.3点⇔54.0点 女子:52.9点⇔55.4点》
〇中学生《男子:38.2点⇔42.4点 女子:45.5点⇔49.9点》
学習以外のスクリーンタイムが伸びると、体力合計点が低下する傾向が見られます。
体力向上のためには、スマホの接触時間を減らす必要がありそうです。
【児童生徒の体格】
・令和元年と比較して、小中学生の男女とも肥満の割合が増加しています。
特に小学生男女及び中学生男子では過去最大の値を示しています。
〇小学生《男子:11.1%→13.1% 女子:8.1%→8.8%》
〇中学生《男子:8.6%→10.0% 女子:6.6%→7.1%》
新型コロナ感染拡大の影響で、外で運動する時間が減ったため、肥満の割合が増えたと推察されます。
また、肥満である児童生徒は、その他の児童生徒と比較して体力合計点が低い傾向が見られます。
〇小学生男子《平均:52.5点=痩身:52.5点→普通:53.5点→肥満:46.8点》
〇小学生女子《平均:54.7点=痩身:53.8点→普通:55.2点→肥満:50.2点》
〇中学生男子《平均:41.1点=痩身:35.9点→普通:42.0点→肥満:35.0点》
〇中学生女子《平均:48.4点=痩身:44.8点→普通:49.0点→肥満:43.4点》
規則正しい食生活を維持しながら、運動する機会・時間を増やすことで肥満児童生徒の割合を減らす努力が求められます。
全ての生徒に対して体育の授業以外で体力向上への取組を行った学校の比率を令和元年と令和3年を比較して見てみると、小学校は元年が84.4%に対して、3年は71.4%と13.0ポイント低下、中学校も元年が54.9%に対して、3年は39.8%と15.1ポイント低下しました。
学校での感染対策を優先した関係で、放課後の部活動など体力向上への取組を行うことが難しかった学校が多かったようです。
※参考にしたサイトはコチラ
https://www.mext.go.jp/sports/content/20211222-spt_sseisaku02-000019583_111.pdf
5:部活動の実施状況はどうなっているの?
中学校・高等学校の運動部の活動状況はどのようになっているのでしょうか?(財)日本スポーツ協会が令和3年7月発行した『学校運動部活動指導者の実態に関する調査』の結果に沿って見ていきましょう。
【1週間あたりの休養日数】
・『週2日以上休養』は中学校では8割に達するも、高等学校は4割に留まります。
中学校で見ると『週2日』が最も多く、66.0%。次いで『週3日以上(14.6%)』『週1日(14.2%)』『週0日(5.1%)』の順となっており、高等学校では『週1日』が最も多く、48.2%。次いで『週2日(29.4%)』『週3日以上(11.4%)』『週0日(11.0%)』の順となっています。
中学校の8割以上(=80.6%)は『週2日以上』休養日を設定しており、2018年3月に策定された『運動部の在り方に関する総合的なガイドライン』のなかで週2日以上の休養日を設けるよう推奨していることに沿っていますが、高等学校では4割強(=40.8%)に留まっています。さらに、1週間に1日も休養日がない部活動も1割を超えています。
【曜日別休養日数】
・中学校の8割以上、高等学校の6割近くが日曜日を休養日としています。
中学校では『日曜日』が最も多く、83.7%。次いで『水曜日(44.5%)』『月曜日(35.5%)』の順となっており。高等学校では『日曜日』が最も多く、56.4%。次いで『月曜日(28.7%)』『水曜日(18.1%)』の順となっています。
【週あたりの活動上限時間】
・中学校の4割超、高等学校の7割超が上限時間を超えて活動しています。
前述のガイドラインでは、1日の活動時間の上限を『平日は2時間、休日は3時間』と設定しています。よって、休養日を平日・休日に1日ずつ設定したとして、『平日は4日・休日は1日』活動となり、その結果、週の上限時間は11時間となります。
但し、現状では中学校の4割超(=41.9%)、高等学校では実に7割超(=74.2%)が11時間を超えて活動しています。
【休日の運動部活動における地域移行】
・7割超の中学校・高等学校が「一度も連携したことがない」と回答しています。
最近、メディア等で取り上げられることも多い「休日の運動部活動における地域移行」の状況を見てみると、中学校・高等学校の指導者の7割以上が「一度も連携したことがない・わからない」と回答しています。(中学校:73.7%・高等学校:74.8%)
今後、地域移行をスムーズに進めるためには、ガイドラインの策定や指導者への謝金に関する取り決め、地域団体への支援など周辺環境を整備していく必要がありそうです。
【運動部の設置数】
・平均設置数で見ると、中学校は約10部、高等学校は約14部となっています。
スポーツ庁による『平成29年度運動部活動等に関する実態調査報告書』から運動部(体育会系)の設置数を見てみると、中学校では『10~14部』が最も多く、40.6%。次いで『6~9部(29.6%)』『3~5部(14.3%)』『15~19部(10.1%)』の順となっており、高等学校では『10~14部』が最も多く、37.8%。次いで『15~19部(33.8%)』『6~9部(15.7%)』『20部~(10.5%)』の順となっています。
1校当たりの平均設置数では、中学校が10部弱(=9.8部)、高等学校が14部弱(=13.9部)となっており、高等学校のほうが中学校より4部ほど設置数が多くなっています。
【休部・廃部】
・中学校・高等学校とも8割以上が『0部=なし』と回答しています。
休部・廃部の数を見ると、中学校・高等学校とも8割以上(=86.1%・81.1%)が『0部=休部・廃部なし』と回答しています。
少子化の影響を受けていないようにも見受けられますが、高校野球などの地方予選では、他校との連合チームで大会に参加しているケースが増えていることからもわかるように、学校単独では競技に参加できる人数に達していなくても、部としては存続させている学校が多いと推察されます。
【所属状況】
・中学生の7割超、高校生の5割超が運動部に所属しています。
所属状況を見てみると、中学生では7割超(=72.5%)、高校生でも5割超(=54.5%)が「運動部に所属している」と回答しています。2割近い生徒は高等学校進学を機に、運動部に所属しないようになるようです。
中学校より高等学校のほうが「練習時間が長く、休養日が少ないこと」が影響しているのかも知れませんね。
第1部活動の競技種目別ではどうでしょうか?
公立の中学校で見ると、『ソフトテニス』が最も多く、14.8%。次いで『バスケットボール(14.1%)』『卓球(12.3%)』『バレーボール(10.3%)』『軟式野球(9.2%)』の順となっています。私立中学では、『テニス』が最も多く、12.4%。次いで『サッカー(12.1%)』『バレーボール(9.6%)』『バスケットボール(8.5%)』『卓球(8.3%)』の順となっています。
公立中学校で『ソフトテニス部』が人気の理由は、多くの学校に『テニス部』がないことが影響しているようです。因みに、私も公立中学の出身ですが、『ソフトテニス部』に所属していました。
高等学校ではどうでしょうか?
公立では『バスケットボール』が最も多く、10.8%。次いで『サッカー(10.5%)』『硬式野球(10.2%)』『バトミントン(8.3%)』『陸上競技、バレーボール(ともに8.1%)』の順となっています。私立では『サッカー』が最も多く、14.7%。次いで『硬式野球(10.1%)』『バスケットボール(9.2%)』『バレーボール(7.6%)』『陸上競技(5.9%)』の順となっています。
高校になると、『テニス』や『卓球』などの個人種目のランクが下がり、『バスケットボール』や『サッカー』『硬式野球』などの団体競技が上位に来ています。プロリーグがあることも影響しているのかも知れません。
※参考にしたサイトはコチラ
https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/katsudousuishin/doc/R3_gaiyoban.pdf
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop04/list/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/06/12/1403173_2.pdf
6:スポーツと食・ファッションの関係性は?
スポーツと食の関係性はどうでしょうか?
日清オイリオがトップアスリートを目指しているお子さんがいるご家庭に向けてまとめた『親子で楽しむ“食生活サポート”』を参考に、食生活で気をつけるべき点を見ていきましょう。
【バランスのとれた食生活を心掛ける】
〇『主食・主菜・副菜・汁物・果物』をそろえた朝食をしっかりとる。
〇1日3食しっかりとる。
→筋肉の材料となるたんぱく質を多く含んだ食材を食事のたびにしっかりとる。
→生野菜だけでなく、冷凍食品も上手に活用しながら、野菜を残さず食べる。
→カルシウム不足に陥らないために、牛乳を毎日コップ2~3杯分飲む。
→ビタミンと水分が豊富な果物をしっかりとる。
【練習前後に捕食をしっかりとる】
〇練習前の摂取は集中力を高め、練習後の摂取は疲労回復効果が期待できることから
練習の1~2時間前と練習直後に必ず捕食をとる。
〇エネルギー源となる炭水化物を多く含む食材を中心に、日ごろの食事で補いきれないビタミンやミネラルが豊富な食材もとる。
〇練習前・練習中・練習後に水分をこまめに補給する。
【試合前日・当日の食事に気を配る】
〇前日:炭水化物が豊富に含まれる食材を積極的にとり、生ものや腸内にガスがたまりやすい食材を控える。
〇当日(試合前):3時間前に食事は済ませる。食事の内容は炭水化物がしっかりとれ、ビタミンCの補給もできるようにする。また、消化がよく、火を通した食材を使用する。
〇当日(試合後):炭水化物と水分を早めにとる。
【目的に応じた食事計画を立てる】
〇身長を伸ばす=カルシウムが豊富に含まれ、カルシウムの吸収を助ける食材
〇持久力を高める=ビタミンB1、ビタミンB2、鉄を多く含む食材
〇強い筋肉を作る=タンパク質(動物性、植物性)
など目的に応じて必要な栄養素が摂取できる食材を使った食事計画を立てましょう。
練習前後や試合などアスリート特有の食習慣が求められるも、栄養バランスを考えた食事を1日3食しっかりとることは健康な生活を送るために、誰にとっても必要なことと言えるでしょう。
スポーツ観戦時の食事はどうしているのでしょうか?
2019年10月に「出前総研」が「出前館利用者」を対象に実施した「スポーツ観戦に関する調査」の結果を見ていきましょう。
【自宅でのスポーツ観戦】
食事は『出前を注文する』が最も多く、62.6%。次いで『デパートやスーパー、コンビニでお惣菜を購入する(51.2%)』『自炊する(42.7%)』の順となっています。重視点では『手早く食べられる』が最も多く、45.2%。次いで『ビールやお酒に合う(39.7%)』の順。具体的なメニューとしては『ピザ(76.1%)』や『寿司(35.5%)』などの片手でつまめて手軽に食べられるメニューが人気となっています。
【現地でのスポーツ観戦】
重視する点で見ると、『手早く食べられる』が最も多く、60.9%。次いで『食べるときに場所を取らない(54.0%)』『ビールやお酒に合う(49.7%)』『冷めてもおいしい(21.7%)』『ボリューム感(13.7%)』の順となっています。現地で食べたいメニューで見ると、『フライドチキン・から揚げ』が最も多く、60.9%。次いで『サンドイッチ・ハンバーガー(59.6%)』『フライドポテト(49.7%)』『焼きそば(46.0%)』『たこ焼き・お好み焼き(41.0%)』の順となっています。
また、現地で食事を購入する際の不満点としては、『並ばないといけない』が最も多く、70.2%。次いで『割高感がある(67.1%)』『同じようなメニューしかない(28.0%)』『美味しくない(20.5%)』『ボリュームがない(12.4%)』の順となっています。
『並ぶ手間』と『価格』が二大不満要因と言えるでしょう。
→自宅・現地いずれで観戦する場合でも、手軽に食べられて、アルコール類に合うメニューが求められています。
ファッションの分野はどうでしょうか?
矢野経済研究所の調べによると、2021年のスポーツアパレルの国内市場規模は5,350億円・前年比で109.7%を見込んでいます。
前年比で2桁近く伸びても、前年の2020年は新型コロナの影響により前年比で86.8%と大幅に落ち込んだため、コロナ禍前の2019年の水準(5,618.3億円)には達しないようです。
全12カテゴリーのうち、11のスポーツウェアカテゴリーが2019年の金額に届かないなか、ゴルフウェア市場のみ2019年の金額を上回る(100.1%増・910億円)見込みです。『3密』が避けられるとしてゴルフ人気が高まっていることが理由として挙げられます。利用者数が前年比2桁増のゴルフ練習場が多くみられ、週末には人気の高いゴルフ場は予約が取れなくなっています。
マイボイスコム(株)が2020年12月に実施した『スポーツブランドに関するアンケート調査』の結果から消費者のスポーツブランドに対する着用状況・購入頻度等を見ていきましょう。
【よく身に着けるスポーツブランド】
・『アディダス』と『ナイキ』はほぼ3人に1人が着用しています。
『アディダス』が最も多く、34.3%。次いで『ナイキ(30.8%)』『ニューバランス(20.5%)』『アシックス(19.0%)』『ミズノ(16.6%)』『プーマ(12.6%)』の順となっています。
【よく身に着けるスポーツブランドのアイテム】
・ほぼ3人に2人が『シューズ、スニーカー、ブーツ』を着用しています。
『シューズ、スニーカー、ブーツ』が最も多く、63.9%。次いで『Tシャツ(36.1%)』『ジャージ、スウェット(35.0%)』『スポーツ専用ウェア(34.6%)』『アウター※(27.7%)』『靴下(22.6%)』の順となっています。
(※アウター=ジャンパー、ジャケット、フリース、パーカーなど)
【スポーツウェアを身に着ける場面】
・『スポーツ・運動時』以外に着用している人が多くいます。
『日常のファッション』が最も多く、47.0%。次いで『スポーツ・運動をする時(46.9%)』『動きやすい服装がよい時(30.0%)』『アウトドアに出掛ける時(23.5%)』『家にいるときの部屋着(22.3%)』『旅行に行く時(13.2%)』の順となっています。
→半数近い人は『日常=タウンユース』で上手にスポーツブランドのウェアを取り入れています。また、『部屋着』として活用している人も2割以上います。
【スポーツブランドアイテムの購入頻度】
・購入頻度は必ずしも高くない。
『自分では購入しない』が最も多く、26.6%。次いで『1年に1回程度以下(25.5%)』『半年に1回程度(17.4%)』『1年に1回程度(17.3%)』『3~4か月に1回程度(8.6%)』『2か月に1回程度(2.4%)』『1ヵ月に1回以上(2.1%)』の順となっています。
【スポーツブランドアイテムの購入場所】
・インターネットショッピングよりリアル店舗で購入している人が多い。
『ショッピングセンター(モール)、アウトレット』が最も高く、46.3%。次いで『スポーツ用品店、アウトドアショップ(39.4%)』『インターネットショッピング(34.4%)』『衣料品店、靴・かばんなどの専門店(17.4%)』『スーパー(13.6%)』の順となっています。
※参考にしたサイトはコチラ
https://www.nisshin-oillio.com/sports/body/index.html
https://serai.jp/hobby/381381
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2868
https://www.myvoice.co.jp/biz/surveys/26910/index.html
6:さいごに
シニア層が健康目的のために、ウォーキングなどの軽めの運動を習慣的に実施しており、超高齢社会の進展で今後も伸び続けると予想されます。また、東京オリンピック・北京オリンピックに続いて、11月にサッカーワールドカップの開催が予定されており、スポーツへの関心が高まっています。
そこで自宅やスポーツバーなどでのワールドカップ観戦需要も期待されています。東京オリンピックで話題となったスケートボードやBMXなどのアーバンスポーツが若い世代を中心に人気が高まり、競技人口も増えています。スポーツへの追い風が吹く一方、逆風もあります。
少子化の影響で今後、若年人口が減少し続けることで野球やサッカーなどの人気競技ですら、競技人口の減少が加速していくと考えられています。さらに、生徒数が減少し続けると、運動部に入る生徒も減ることで、運動部の休部や廃部に繋がり、スポーツに接する機会が減ることも懸念されています。
さらに、新型コロナ感染拡大により、体育以外で運動する機会が減少した影響で小中学生の肥満児童の増加が問題視されています。さらにスクリーンタイムの増加に伴い、運動・スポーツ実施率が下がり続けることも懸念されます。スポーツを取り巻く状況に対して期待と不安が入り混じるなか、さらに運動・スポーツは非常に範囲が広いテーマでもありますので、効果的な販促施策を立案するためには、需要を的確に把握することが重要となります。
現在、期待される需要としては
〇シニア層を中心とした健康・筋力維持需要
〇現役世代における余暇時間を充実させるための運動・スポーツ需要
〇3密回避ができるゴルフ・キャンプ需要
〇現地・自宅でのスポーツ観戦需要
〇中学校・高等学校の運動部需要
〇小中学生や女性向けの運動不足解消に向けた室内トレーニング需要…等
多岐にわたります。
各需要の状況を冷静に分析・整理することで課題を抽出し、その課題解決につながる効果的な施策を構築できれば、成功する販促施策に近づくでしょう。他企業・他店との差別化を意識し、御社ならではの『スポーツの日』をテーマにした販促施策を構築していってください。