エリアマーケティングという言葉を皆さん聞いたことがありますでしょうか。これは、マーケティングのうち、エリアセグメンテーションを掛けて行う活動のことを言い、「エリア(=地域・地区)」と「マーケティング(=売るための仕組み)」を組み合わせた造語です。市場を単なる商品売買の場として捕らえるのではなく、顧客の日常の生活空間として捉え、そこから商店の存在する場所に特化した経営を活動をしていく経営戦略のことを指します。かんたんに言えば、「地域を絞って行う、売れるための仕組みづくり。」と言えるでしょう。
※世界中の都市間で起こっている競争のなかで、(ある一定のカテゴリーにおいて)いかに競争に勝ち抜いていくか、というようなエリアマーケティングして人を集めたり、資本を集めたり、都市を発展させていくことをエリアマーケティングと呼んだり、マーケティングのなかで、地理的な情報を分析すること自体を、エリアマーケティングと呼んだりするケースもあります。
こちらの記事では「地域を絞って行う、売れるための仕組みづくり=エリアマーケティング」の活動の起点になる分析の部分についてご説明したいと思います。※無料のツールのご案内はコチラから。(ページがスクロールします。)
※エリアマーケティングを行ううえで、分析はビジネスの収益にも影響していきます。
商圏分析については下記のブログの記事も参考にしてみてください。
参考記事:
収益の最大化に欠かせない「商圏分析」とは?基礎知識と成功のポイント|オリコミサービス
もくじ
エリアマーケティングはどんなときに必要になるのか~7つの視点
1.市場特性:社会・経済など地域市場に影響を及ぼすマクロ環境
2.需要特性:地域の生活のあり方や消費面における特徴
3.チャネル特性:人や企業の流通・商売に対する考え方や価値観
4.競争特性:競合の特徴や脅威度
5.自然・風土特性:自然環境の特徴とそれに応じた住民の暮らし方
6.歴史・文化特性:歴史によって育まれた価値観や慣習
7.情報特性:情報の伝わり方や考え方、スピード
店舗のエリアマーケティングを行っていくうえで使えるデータとは
1.地域を知るためのデータ
2.店舗を知るためのデータ
3.顧客を知るためのデータ
4.営業強化エリアを知るためのデータ
5.施設の影響力を知るためのデータ
1. J-STAT MAP
2. 地域経済分析システム(RESAS:リーサス)
3. OPoSSuM
4. 平成28年社会生活基本調査
5. ロケスマ
個別の地域情報にもとづき、狙うべき地域と狙うべき市場 (ユーザーやチャネル)を明確化し、それぞれの地域市場特性をとらえ、そこに的確な商品戦略やチャネル戦略、方策などを組み合わせて、個別に集中的なマーケティング活動を行い、競争に勝ち、成果をあげていくマーケティング・プロセスであり、顧客満足度向上を目指す取り組みを指します。
例えば、店舗を主体とした小売業については、店舗は一度出店すると簡単には動かすことができません。そのため、商売可能な範囲(商圏)ありきで、商売を行う必要があります。
そのため、基本的には店舗近隣の来店することができるお客様から、いかに支持されるかが重要なポイントになり、その地域を知り、地域における顧客特性を理解した上で、最適な「売れる仕組み」をつくる必要があるのです。
それでは、エリアをどのように捉えて分析していけばいいのか、8つの視点についてご紹介いたします。
1. 市場特性:社会・経済など地域市場に影響を及ぼすマクロ環境
例)市場規模、成長性、人口・世帯の構成
お店を出すときには、周りにどのような家が多いのか、どういった人が多いのかを把握する必要があります。また、その人口世帯、ビジネスの対象となる人たちがこれから増えていくのか、もしくは減っていくのか、分かっておく必要があります。例えば、お店を出すときにはその周辺が増加トレンドなのか、それとも過疎化していく場所なのかを分析しておく必要があるという観点です。
一都三県における2015年までの推計将来人口増減率
2. 需要特性:地域の生活のあり方や消費面における特徴
例)消費者の消費動向やライフスタイル
マクロ環境にも関係してきますが、そこに住んでいる人がどんなライフスタイルなのかを把握します。例えば、そこに住んでいる人の家族構成の傾向であったり、移動するときの手段は電車なのか車なのかであったり、週末はどんな過ごし方をしているか、といった行動特性、それに紐づく需要が何なのかを把握しておくという観点です。
3. チャネル特性:人や企業の流通・商売に対する考え方や価値観
例)流通に関与する人々のビジネスマインド、経営、商売に対する意欲・考え方
商習慣というようなものもこちらに含まれます。買い物に行くときはショッピングセンターなどが使われやすいのか、それともコンビニや、小型の食品スーパーなどが使われやすいのか。もしくは、店舗ではなくて、通販を使う人が多いかなど、チャネルとしてどこに対しての好意度が高いのか、どこで買い物をする頻度が高いのかなどの観点です。
4. 競争特性:競合の特徴や脅威度
例)競合のお店の数や売場面積、マーケットシェア、駐車場台数、営業時間
こちらは特定エリアにおける、競合度や、競合自体が提供するサービスがどんな特徴があるのかなどの観点です。時点から競合店の距離や、その店舗面積。また、地域の消費者がメリットとして判断する競合優位点があるのかなど、その特徴をとらえ、脅威度を定量化するなどの分析の仕方があります。
5. 自然・風土特性:自然環境の特徴とそれに応じた住民の暮らし方
例)自然条件に対する人々の考え方、気象・地形の特徴
なかなか、定量的に判断がしにくい項目ではありますが、日本において、北海道、東北、北陸であれば雪が生活と密接に結びついており、それに関連しての生活している方の過ごし方が変わってきますし、台風や火山など自然の脅威が身近にある人であれば、それは消費者意識にも確実に何かしらの影響を与えます。基本的には天候であったり、平均気温のようなデータを把握などが取り入れやすい情報ですが、忘れないようにしたい観点です。
6. 歴史・文化特性:歴史によって育まれた価値観や慣習
例)生活のなかの習慣、風習、地域的祭事、行・催事
こちらもまた、データとして一律で常にそろえるのは難しい要素ですが、文化特性も見逃さないようにしたいポイントです。例えばお中元の贈る時期は、日本全国でタイムラグがあります。また、料理の味付けなども、県民性ではありませんが、地域ごとに違うという要素もあります。お雑煮の味付け、餅の形など話に上がりやすい慣習ですが、エリアを絞って売れる仕組みをつくっていくのなら、この観点も忘れないようにチェックしたいポイントです。
7. 情報特性:情報の伝わり方や考え方、スピード
例)地域内情報と地域外情報の受け取り方、情報ネットワーク
メディア展開などをするときに、そもそもWEBを通した情報接触の比率が高い都市部と、相対的には低い郊外であったり、新聞の購読などを見ると、都市部が低く、郊外が高かったりします。また公共交通機関の発達や乗車率が高い都市部では、電車やバスなどのメディアに対する接触が高くなりますが、地方・郊外では、車の移動の比率が高く、ロードサイドの看板の方が触れる可能性が高いなど、メディアを展開するときのリーセンシーにも大きく影響してきます。
これら一見、あまり論理的ではない、ビジネスに関係がないような要素もあるように思えますが、エリアマーケティングにおいては、これらの情報を深く収集・分析しておくことが重要となります。
いくつもの視点を地図化するなどしてマーケティングに生かしていく
たとえば、(5)自然・風土特性であれば、雪の降る地域の場合、夏と冬によって商圏の広がり方が異なります。とするならば、販促手段一つとっても、夏は広域、冬は足元(近隣エリア・店内販促中心)と変わってきます。なかなか分析しにくいところですが、確実にその違いはあるでしょう。
また、北海道のような広大な土地に住んでいる人は、「すぐそこ」が数km先といった感覚で、都心の人にとっては10分歩くことにも心理的なハードルがあるようなケースもあります。つまり、同じ業態であっても北海道の場合は商圏が広く取れる(都心であれば取れない)可能性があるのです。一方で、(6)歴史・文化特性の観点から見ると、地元意識が強く、他のエリアから入ってくるものを簡単に受け入れてくれないという特性を持っているエリアも存在します。これも、データの分析ではなかなか見えないことです。
このように、ビジネスを行っていくうえで、エリアを捉えていく視点はいくつもあります。 「エリアに制約される店舗」を経営する際は、該当地域を深く知り、その特性に合わせた売れる仕組みを構築していくことが、エリアマーケティングの成功には欠かせないのです。
では次に、具体的にはどのようなデータをマーケティングに活かしていくことができるのか、見てみましょう。
店舗としてエリアマーケティングを行っていくうえでは、下記のデータを活用することができます。下記の5つの視点でデータを揃えてみて、現状の分析をしてみましょう。
1. 地域を知るためのデータ
各商品/サービスのターゲット層はどこに、たくさん住んでいるのか?人口統計、人口分布、世代構成、年代構成、昼夜間人口差、生徒・学生数、高齢者数など。人口が増えている地域/減っている地域はどこか? 市場(規模)成長性(国勢調査からの2010年-2015年の人口差などから)など。
2. 店舗を知るためのデータ
自店舗分布状況はどうか?競合店との商圏重複は大きいか?自店舗および競合店舗分布を地図に表示して一覧する。
自店舗周辺には、メインターゲットがいるのか?Tカードや、PONTAなどのポイントカードの住所データ、店舗独自の会員データ、ネットスーパーなどの利用者データなど。
3. 顧客を知るためのデータ
顧客の居住地情報を地図で見える化して、自分のお店の強いエリア(市場占有率の高いエリア)・弱いエリアはどこかを把握する。特定の顧客グループ(上位顧客、特定商品購入顧客等)はどこにいるのか?ID-POSを活用して会員のデータを地理情報と紐付けて、買い物をした人はどこから来ているのかのデータ。twitterのtweetと位置情報を組み合わせて、どこでどのような情報発信をしているのかを知るSNSの情報など。
4. 営業強化エリアを設定するためのデータ
市場規模があるにも関わらず、店舗が展開できていないエリアはどこか。自店舗網と背景の国勢調査データにおける市場規模を重ねてみることで抽出する。競合店舗等を加味した戦略展開をする上での優先エリアはどこにすべきか?自店舗網と競合店舗網の重複エリア、空白エリアと市場規模。各小売店舗の売場面積などのデータ。
5. 施策の影響力を知るためのデータ
顧客獲得施策によって地域の状況はどのように変化したのかの内部データ。販促計画と来店実績を比較することで、店舗の浸透度・人気度と販促効果を計ることができる。あらたな施策方法は何にすればいいか。また販促を集中すべきエリアはどこかを考えるためのデータ。
このように、内部、外部のデータを駆使して店舗周辺や顧客を分析をしています。その結果をもって、広告を打ったり、販促施策を実施したり、何かのアクティビティーを起こしたあとでも、その結果を分析して、分析と実践を繰り返していく活動がエリアマーケティングです。ビジネスを継続していく限りは終わりはありません。いかに継続してアクションの効果を高めていくのか。何か良くない兆候が見えたときにはケアができるようにするのか。長期でチェックをできるよに仕組みにすることが重要です。
何をするにもまず、分析・状況の考察が必要ですが、そこから何をしていくのか、俯瞰して計画を実行していくようにしましょう。
先に挙げたような分析は、私たちのようなプロに頼むほかに、無料のツールなどで、分析をしたり、プランニングに生かしていくことができます。そちらのツールについて5つほどサービスをご紹介したいと思います。
・jSTAT MAP https://jstatmap.e-stat.go.jp/gis/nstac/
総務省が公開している、政府統計の総合窓口「e-Stat」において、統計GIS機能を持つ「jSTAT MAP」というソフトがあります。
小地域ごとに地図と統計データを重ねて表示し、ユーザーが保有するデータを取り込んで分析ができます。
指定したエリア内の統計データをレポート出力することも可能です。
最新の国勢調査の数値も出力する事ができます。あまり複雑な集計をするのには向いていませんが、
お店から○km圏の世帯を集計したい、といった簡単な数字の出力であれば、こちらで対応する事が可能です。
・地域経済分析システム(RESAS:リーサス) https://resas.go.jp/
地域経済分析システム(RESAS:リーサス)は、地方創生の様々な取り組みを情報面から支援するために、
経済産業省と内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)が提供している産業構造や人口動態、人の流れなどの官民ビッグデータを集約し、可視化するシステムです。こちらの画像のように、東京都中央区には平日どこ(の市区町村)から人が来ているのかを見たり、将来的に人口が増えていく場所、減っていく場所はどこなのか、といったことも集計する事が可能です。
・OPoSSuM http://opossum.jpn.org/simulator/
OPsSSuMでは、「未来カルテ」をダウンロードすることができます。「未来カルテ」は人口減少・高齢化の予測を見ることができるデータです。
”25年後のストックの課題に気付くため”のデータの活用を標榜しており、地域課題の抽出するツールとして有効なのはもちろんですが、
各指標は「今後のエリアの未来」を知るうえで、とても分かりやすいデータとなっています。(集計は市区郡ごとの集計。)
具体的には、現在の傾向が継続した場合の2040年の産業構造や、保育、教育、医療、介護の状況、公共施設・道路、農地などの維持管理可能性など約10分野について、国勢調査や国立社会保障・人口問題研究所の人口予測などの各種統計データを用いて、5年ごとの推移をシミュレーションした結果が掲載されます。出店地などを考えるときにもそのエリアの今後のトレンドを見ておくことは重要で、活用できます。
・平成28年社会生活基本調査 http://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/index.htm
社会生活基本調査は,国が実施する統計調査のうち,統計法(平成19年法律第53号)により特に重要なものとされる「基幹統計調査」として実施する調査です。調査の内容は生活行動に関する結果として、自由時間等における主な活動(「学習・自己啓発・訓練」,「スポーツ」,「趣味・娯楽」,「ボランティア活動」,「旅行・行楽」)について, 過去1年間に,それぞれの種類別に活動を行ったか否か,活動頻度や目的,共にした人別に,該当する種類の活動を行った人の数や割合を集計しています。これらの都道府県後との集計値も見ることができます。例えばゴルフに一番時間を掛けている県は?といった数値などを統計から見出すことが可能です。
他にも時間帯別の行動状況から,行動の種類別に一人1日当たりの平均時間及び該当する行動をした人の平均時間などを週全体の平均または曜日別に集計した数字をダウンロードすることができます。エリアのマーケティングという観点でどこからそのプロモーションを実施していくべきなのか、数値的な裏付けを考える時に役立てることができます。
・ロケスマ https://www.locationsmart.org/
株式会社デジタルアドバンテージが公開している、Webブラウザを利用したチェーン店検索サービス「ロケスマWeb」は、競合の店舗を俯瞰するときに使うことが可能です。もしあなたが、カフェを新たに出店するという時に、下の図のような、近所のチェーン店カフェマップがあれば、エリアのなかでどのような活動を行っていくべきか、大きく役立ていることができるのではないかと思います。
以上のように、エリアマーケティングを行っていくうえで、欠かせない視点やデータはとてもたくさんあります。ただ分析しても、それらを活かすことができなければ意味がなくなってしまいます。分析をしたうえで、それをどのような活動に繋げていくのか、計画的に考えながら、アクションを取るようにしてみて下さい。
さいごに、私たちでもエリアマーケティングに関するサポートや、それに付随するデータの提供をしております。
ツールももちろん重要ではありますが、どのような視点で、何を分析して、どう役立てていくのかは
私たちのようなプロに任せていただいた方が、これからエリアマーケティングに注力していこう、という方にとっては、
効率的にその活動を加速させることができるでしょう。
下記のデータ集は私たちが提供しているエリア分析のサービスです。ひとつの場所に対して5つの距離圏を設定して人口、世帯数、住宅の建て方(戸建てが多いか、共同住宅が多いか)などをまとめたものです。多くの会社さんにはじめの一歩として活用いただいています。短納期でご準備ができますので、必要な方は下記のフォームからご相談いただけたらと思います。
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